(天声人語)セサミストリートの女の子
2017年4月11日05時00分
その女の子は4歳、名前はジュリア。髪はオレンジ色でウサギのぬいぐるみが大好き、そして自閉症である。子どもたちに人気の米国の番組「セサミストリート」の新しいマペット(操り人形)だ。黄色いビッグバードや真っ赤なエルモたちに仲間入りする▼番組のサイトではエルモがジュリアのことを友だちに説明している。「ほかの人とちょっとやり方が違うんだよ」。呼びかけても答えないことがあるけど、それは君を嫌いだからじゃない。雑音を怖がるのは耳がとても良いからだと▼ジュリアの人形を操るステイシー?ゴードンさんは自閉症の息子の母である。もし息子の友だちがこの番組を見ることができたら「息子が叫んでも心配しなかったろうし、違う遊び方をしても、それでいいんだと思ってくれたかもしれない」と米メディアに語っている▼米国では68人に1人の割合で自閉症児がいる。そんな子を持つ家族からの要望が何年も前からあり、受け止めた。一人ひとりの違いを認める社会であってほしいとの作り手の思いが伝わってくる▼「僕は、いつも同じことを聞いてしまいます」。東田直樹(ひがしだなおき)さんが著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』で述べている。聞いたことをすぐ忘れるからだけではない。同じ言葉なら苦手な会話もしやすい。「それが言葉のキャッチボールみたいで、とても愉快なのです」▼違いを言い募るのではなく違いを理解する。壁をつくるのでなく向き合う。願わくは、そんな心の構えでありたい。