華やぐ街を漂えば、この世は二人一組で構成されているかの錯覚を覚える。新春に限った景色ではないが、渋谷も原宿も男女のカップルばかりである。もっとも、相手がいるから寒空に繰り出すわけで、この様子が全体像ではない▼国立社会保障・人口問題研究所の調査(2010年)によると、「交際している異性はいない」と回答した独身者(18~34歳)が男性で61%、女性で50%いた。5年前に比べ男性が9ポイント、女性も5ポイント増え、ともに80年代に調査を始めてからの最多となった▼意外にも、彼女や彼氏がいない男女の半数近くが「特に異性との交際を望んでいない」と答えている。独りを楽しめる時代だし、結婚して一人前という見方も薄れたが、男女が引き合う自然の摂理まで怪しくなってきたらしい▼背景の一つに将来への不安があろう。雇用、年金、環境と、若い層の漠たる不安は次第に鮮明になってきた。わが身の明日も読めない時に、家族は構えづらい。これまた生物としての本能ではなかろうか▼厚労省の推計では、昨年の結婚数は前年より3万少ない67万組。生まれた赤ちゃんは105万7千人で、統計のある過去100年ほどで最も少なかった。わが人口ピラミッドは、底辺が削られる形でやせていく▼国の危機を救うために付き合うカップルはいない。因果の順は明らかで、男女の間に立ちはだかるのは、現実の生きづらさや先々の心配である。少子化を嘆く前に、まずは「その気」にさせる策を連打すべし。