コラム 活カの一言 それぞれに自分の運命に思いを新たにし、運命に負けることなく、運命をより生 かし、活用するにはどうすればよいのか、ぜひ考え直してみたいものである。そうす ることで、思いがけず、人生に新たなる展望がひらけてくるかもしれい。 * * * * * * * * * * * * * 素晴らしいチヤンスは、ごく平凡な情景の中に隠れています。それは強烈な目標意識を持った人の目にしか映らないものなのです。目標を持たないうつろな目には、人 生のどんな素晴らしいチャンスも見えることはありません。
朗读:
チャレンジ2
満 足
乙武 洋匡
―― 五体満足でさえいてくれれば、どんな子でもいい――
これから生まれてくる子どもに対して、親が馳せる想いはさまざまだろうが、最低
限の条件として、上のような言葉をよく耳にする。
だが、ボクは五体不満足な子として生まれた。不満足どころか、五体のうち四体までがない。そう考えると、ボクは最低条件すら満たすことのできなかった、親不孝な
息子ということになる。
だが、その見方も正しくはないようだ。両親は、ボクが障害者として生まれたことで、嘆き悲しむようなこともなかったし、どんな子を育てるにしても苦労はつきもの
と、意にも介さない様予だった。何より、ボク自身が毎日の生活を楽しんでいる。多くの友人に囲まれ、車椅子とともに飛び歩く今の生活に、何ひとつ不満はない。
胎児診断、もしくは出生前診断と呼ばれるものがある。文字通り、母親の胎内にいる子どもの検査をするというものだが、この時、子どもに障害があると分かると、ほ
とんどの場合中絶を希望するという。
ある意味、仕方のないことなのかもしれない。障害者とほとんど接点を持たずに過ごしてきた人が、突然、「あなたのお子さんは、障害者です」という宣告を受けたら、
やはり育てていく勇気や自信はないだろう。ボクの母も「もし、私も胎児疹断を受けていて、自分のお腹のなかにいる子に手も足もないということが分かったら、正直に言って、あなたを産んでいたかどうか自信がない」という。
だからこそ、声を大にして言いたい。「障害を持っていても、ボクは毎日が楽しいよ」。健常者として生まれても、ふさぎこんだ暗い人生を送る人もいる。そうかと思えば、手も足もないのに、毎日ノー天気に生きている人間もいる。関係ないのだ、障害なんて。
そうしたメツセージを伝えるためにも、この本のタイトルをあえて『五件不満足』という、少々、ショツキングなものとした。五体が満足だろうと、不満足だろうと、幸せな人生を送るには関係ない。そのことを伝えたかった。身体に障害をお持ちの方で、この『五体不満足』というタイトルを見て、不快に感じた方もいといらっしゃるかもしれない。だが、そうしたボクの意図に、理解を示していただければありがたい。、
(『五体不満足』講談社)
注釈
1.つきもの:あるものに必ず附属しているもの。 2.中絶:妊娠中に、人為的に流産や早産をさせること。 3.ふさぎこむ:非常に憂欝な気分になる。 4.ノー天気:物事を深く考えない、単純な行動をする人。またはその様子。 5.タイトル:本や映画などの題名。 |
練習問題
1.「五体満足」とはどういう意味ですか。
2.筆者はどうして自分を「親不孝な息子」と思うのですか。
3.五体不満足な子として生まれた作者が今の生活に、何ひとつ不満がないのはなぜですか。
4.あなたは「障害者」をどう見ますか。
5.幸せな人生とはどういうものでしようか。
正解
1.手や足などがそろつていて、体が健全なことです。
2.親が生まれてくる子どもに期待する最低限の条件さえ満たすことができずに生まれたから。
3.親と多くの友人に温かく愛されているからです。
4.(略)。
5.(略)。