9 子罕篇
●子罕-01
子罕言利與命與仁
先生はめったに利益について語らなかった。語っても、運命?仁徳に関連する場合に限られた。
*(利益、運命、仁の三つとも語らなかった)とする解釈もあり
●子罕-02
逹巷黨人曰、大哉孔子、博學而無所成名、子聞之、謂門弟子曰、吾何執、執御乎、執射乎、吾執御矣
逹巷の村の人が言った。
孔先生は偉大なものだね。広く学ばれて、それぞれの専門分野での高い名声をお持ちにならない。
先生はそれを聞くと門人に向って言った。
私は専門的に何をするかな。弓かな、御者かな?私は御者をやろう。
●子罕-03
子曰、麻冕禮也、今也純儉、吾從衆、拜下禮也、今拜乎上泰也、雖違衆、吾從下
先生がこう言っていた。
礼服としては麻の冠が好ましい。この頃それを絹糸にしているのは倹約だ。そこで私も今の流れに従おう。
偉いさんに招かれた時は丁寧にお辞儀をするのが好ましい。この頃簡単にお辞儀をするのは好ましくない。そこで私は今の流れに従わずにいよう。
●子罕-04
子絶四、毋意、毋必、毋固、毋我
先生は、独断的な思い込み?無理な押しつけ?一つの考え、言葉に固執する事?でしゃばる事。この4つは決してしなかった。
●子罕-05
子畏於匡、曰、文王既沒、文不在茲乎、天之將喪斯文也、後死者不得與於斯文也、天之未喪斯文也、匡人其如予何
先生が匡という土地でなにものかに襲撃されたときこう言った。
わが心の師、周の文王はとっくに亡ないが、その心意気は私の中に伝わっている。この世にこの心意気が必要とされているのなら、ここで殺されるはずがない。必要とされている限り、こやつらごときにわが身をどうする事もできない。
●子罕-06
太宰問於子貢曰、夫子聖者與、何其多能也、子貢曰、固天縦之將聖、叉多能也、子聞之曰、太宰知我者乎、吾少也賤、故多能鄙事、君子多乎哉、不多也
太宰が子貢にこう訊ねた。
孔先生は立派ですね。なんでもソツなくこなして、まさに多芸です。
子貢が答える。
もちろん誰もが認める人格者で、しかもおまけに芸達者ときています。
この会話を先生が聞いてこう言ったという。
太宰は私のことをよく観察しているね。私は若いとき貧乏だった。だからアルバイトのおかげで色々できてしまうのだ。しかし立派な人は色々こなすべきだろうか?色々とはしないものだろうな。したがって私は立派ではないね。
●子罕-07
牢曰、子云、吾不試、故藝
牢が言った。
先生がこう言っていたのを覚えている。私は世間に認められなかったので芸達者になった。と。
●子罕-08
子曰、吾有知乎哉、無知也、有鄙夫、來問於我、空空如也、我叩其兩端而竭焉
先生がこう言っていた。
私は物知りだろうか?いや物知りではない。個人的に嫌なヤツでも、真面目な態度で聞かれれば、私も真面目に答える。ただそれだけだ。
●子罕-09
子曰、鳳鳥不至、河不出圖、吾已矣夫
先生がこう言っていた。
鳳凰は飛んでこないし、川から図版も見えてこない。私も終わりだな。
●子罕-10
子見齊衰者冕衣裳者與瞽者、見之雖少者必作、過之必趨
先生は、喪服を着た人?礼服を着た人?目の不自由な人に出会うと、どんな若い人物であっても立ち上がり、そっと、その人の足運びに注意した。
●子罕-11
顔淵喟然歎曰、仰之彌高、鑽之彌堅、瞻之在前、忽焉在後、夫子循循善誘人、博我以文、約我以禮、欲罷不能、既竭吾才、如有所立卓爾、雖欲從之、末由也已
顔回は力強くこう言った。
先生は、近づこうとすればするほど、大きな存在となり、探れば探るほど深く歯ごたえがあり、前にいるかと思うと、後ろにおられ、捉えようがない。そして先生の指導法は、無理に押し込めようとするのではなく、順序だてて、自然に感じとれるようなやり方だった。
先生の指導によって私は知らず知らずの内に力を伸ばしていることになる。尊敬してついていきたいと思っても、その手立てがないのだ。
●子罕-12
子疾病、子路使門人爲臣、病間曰、久矣哉、由之行詐也、無臣而爲有臣、吾誰欺、欺天乎、且予與其死於臣之手也、無寧死於二三子之手乎、且予縦不得大葬、予死於道路乎
先生が危篤に陥ったので、子路は弟子達をかき集め家来にしたてて、最後を立派に飾ろうとした。
すこし病状が持ち直したとき、先生はこう言った。
子路のヤツ。またでたらめをやりおったな。私に家来などいないのに家来を勝手に作りおって。そんなことをして一体誰を騙そうというのかね?お天道様かい?私は立派な葬式よりも、おまえのような気心の知れた者どもに看取ってもらいたいのだ。お前達がいれば、道端でのたれ死にするようなこともない。
●子罕-13
子貢曰、有美玉於斯、韜匱而藏諸、求善賈而沽諸、子曰、沽之哉、沽之哉、我待賈者也
子貢がこう言った。
ここに美しい珠があるとします。先生はこれを箱に入れて大事にしまいますか?いい買い手を見つけて売りますか?
先生が答える。
売る、もちろん売るよ。いい買い手がないかじっと待つさ。
●子罕-14
子欲居九夷、或曰、陋如之何、子曰、君子居之、何陋之有
先生が自分の考えを実践する場がないので、いっそのこと東の海を越えてそこに住もうかと言った。ある人が、あんなところむさ苦しいでしょう?というと。強い意志があればむさ苦しさなど、関係無いね。と答えた。
●子罕-15
子曰、吾自衛反於魯、然後樂正、雅頌各得其所
先生がこう言っていた。
私が衛の国から魯に帰ってきて、はじめて音楽は正しくなり、雅も頌もそれぞれの場所に落ち着いた。
●子罕-16
子曰、出則事公卿、入則事父兄、喪事不敢不勉、不爲酒困、何有於我哉
先生がこう言っていた。
外では良く働き、家ではよく手伝いをし、葬式にはできるだけ参加し、酒を飲みすぎない。これくらいなら私にも出来そうだ。
●子罕-17
子在川上曰、逝者如斯夫、不舎晝夜
先生が川のほとりでこうつぶやいた。
川の水は流れ去っていく。昼夜休むことなく。
●子罕-18
子曰、吾未見好徳如好色者也
先生がこう言っていた。
私は異性を愛するほどに、道徳を愛した人を観た事がない。
●子罕-19
子曰、譬如爲山、未成一簣、止吾止也、譬如平地、雖覆一簣、進吾往也
先生がこう言っていた。
例えば土を積み上げて山にする場合、あとわずか1モッコのところで止めてしまえば完成しない。これは自分のせいである。整地する場合、わずか1モッコ分の土を平らにしただけでも、その成果は自分の働きである。
●子罕-20
子曰、語之而不惰者、其囘也與
先生がこう言っていた。
話をして、言う事を聞いてくれるのは????顔回ぐらいかな。
●子罕-21
子謂顔淵曰、惜乎、吾見其進也、未見其止也
先生が顔回のことをこう言った。
惜しい人物をなくした。進歩しつづけ、怠けるということを知らなかった男だったのに。
●子罕-22
子曰、苗而不秀者有矣夫、秀而不實者有矣夫
先生がこう言っていた。
苗のままで穂を出さないものがある。また穂のままで実にならないものもある。
●子罕-23
子曰、後生可畏也、焉知來者之不如今也、四十五十而無聞焉、斯亦不足畏也已矣
先生がこう言っていた。
若者は侮れない、自分より年下なだけで自分より劣っている保障はない。ただ40?50にもなってこれといった特徴が無いようでは、さほど恐るるに足りない。
●子罕-24
子曰、法語之言、能無從乎、改之爲貴、巽與之言、能無説乎、繹之爲貴、説而不繹、從而不改、吾末如之何也已矣
先生がこう言っていた。
正しい言葉には従わずにはいられない。だがそれで自分を改めることが大切だ。物柔らかな言葉には嬉しがらずにいられない。だがその真意を訊ねる事が大切だ。喜ぶだけで訊ねず、従うだけで改めないのでは、私にはどうにも手の加えようがない。
●子罕-25
子曰、主忠信、無友不如己者、過則勿憚改
先生がこう言っていた。
真心と信頼を大事にして、自分より劣ったものを見習わない。過ちがあれば、迷うことなく改めることだ。
●子罕-26
子曰、三軍可奪帥也、匹夫不可奪志也
先生がこう言っていた。
相手がどんな大軍でもその大将を力づくで捕虜にできる。だが一人の民でも、力づくでその意思を曲げさせる事はできない。
●子罕-27
子曰、衣敝蘊袍、與衣孤貉者立而不恥者、其由也與
先生がこう言っていた。
粗末な格好をしている身で、豪華な身なりをしている人と並んでいても、ひけ目を感じないのは、子路ぐらいかな。
●子罕-28
不支不求、何用不臧、子路終身誦之、子曰、是道也、何足以臧
人を傷つけず、人に押し付けもしない、何と立派な態度か。
子路は生涯この言葉を口ずさんでいた。
先生は、まだもう一歩ふみこみが足りぬ。と言った。
●子罕-29
子曰、歳寒、然後知松栢之後彫也
先生がこう言っていた。
寒く厳しい季節になって、はじめて松やヒノキが常緑樹であることがわかる。
●子罕-30
子曰、知者不惑、仁者不憂、勇者不懼
先生がこう言っていた。
智者は迷わない。仁者は憂えない。勇者は恐れない。
●子罕-31
子曰、可與共學、未可與適道、可與適道、未可與立、可與立、未可與權
先生がこう言っていた。
共に同じ勉強を出来ても、共に同じ道徳観になるとは限らない。共に同じ道徳観でも、共に同じ道を歩くとは限らない。共に同じ道を歩いていても、共に同じ物事をほどよくできるとは限らない。
●子罕-32
唐棣之華、偏其反而、豈不爾思、室是遠而、子曰、未之思也、夫何遠之有哉
桃の花びら
吹かれて散った
寂しさに君を思うも
あまりに遠い君の家
この詩について先生は言う。
まだまだ恋熱が低いな、熱く思いつめれば遠距離も苦にならない。
10 郷党篇
●郷党-01
孔子於郷黨恂恂如也、似不能言者、其在宗廟朝廷、便便言唯謹爾
先生は、郷里では大人しい性格で、あまり語らなかったが、仕事ではすらすら話され、ひたすら慎重な態度であった。
●郷党-02
朝與下大夫言侃侃如也、與上大夫言ギンギン如也、君在シュクセキ如也、與與如也
先生は、部下に対しては和やかな態度で話し、上司に対しては慎ましい態度であった。そして王に対しては丁寧な態度で接したが、また伸びやかでもあった。
●郷党-03
君召使擯、色勃如也、足矍如也、揖所與立、左右其手、衣前後贍如也、趨進翼如也、賓退、必復命曰、賓不顧矣
先生は、王に接待役を命じられた時は、顔つきは緊張され、足取りは静かに歩いた。人に会釈されたときには手を右に組んだり左に組んだりして、腰を屈める度、着物が前後に揺れ動いた。小走りするときも姿勢を正した。お客が退出される時には、満足して帰られたと報告した。
●郷党-04
入公門、鞠躬如也、如不容、立不中門、行不履閾、過位色勃如也、足矍如也、其言似不足者、攝齊升堂鞠躬如也、屏氣似不息者、出降一等、逞顔色怡怡如也、沒階趨進翼如也、復其位シュクセキ如也
先生は、城の門をくぐる時は慎重にくぐり、王が見えなくても顔つきは緊張され、足取りは静かに歩いた。言葉は少なくされた。裾を持ち上げ堂に入られるときには慎んだ姿で、息をひそめて入られた。堂を出るときは顔色をほぐされて安らかになり、小走りに進む時は姿勢を正した。自分の席に戻ると、丁寧な態度をとった。
●郷党-05
執圭鞠躬如也、如不勝、上如揖、下如授、勃如戰色、足縮縮如有循也、享禮有容色、私覿愉愉如也
まり、を持つときは慎重に持った。上げるときは会釈をするぐらい、下げる時には物を授けるくらいで、緊張した態度だった。足取りは静々とすり足で、贈答の儀式になると、和やかな顔つきになられ、私的な謁見になると、楽しげにされた。
●郷党-06
君子不以紺取飾、紅紫不以爲褻服、當暑袗チゲキ、必表而出、シ衣羔裘、素衣麑裘、黄衣狐裘、褻裘長、短右袂、必有寢衣、長一身有半、狐貉厚以居、去喪無所不佩、非帷裳必殺之、羔裘玄冠不以弔、吉月必朝服而朝
喪中に着るような色合いのものを普段着にしない。
やたら派手な色合いのものは普段着にしない。
暑い時でも、露出し過ぎに気をつける。
寒い時には、体を冷やさないように着込む。
普段着は動きやすいようにする。
寝る時も窮屈な服装をしない。
分厚い座布団をしいて座る。
喪中は装飾を控え、喪が明ければ自由にする。
祭服の為でなければ、スカートの上部はキチンと狭く縫い込んでおく。
めでたい格好で葬儀に行かない。
めでたい日には礼服を着て出仕する。
●郷党-07
齊必有明衣布也、斎必變食、居必遷坐
物忌み、のとき必ず麻布の浴衣を備え、必ず普段と食事を変え、住む場所を変える。
●郷党-08
食不厭精、膾不厭細、食饐而曷、魚餒而肉敗不食、色惡不食、臭惡不食、失壬不食、不時不食、割不正不食、不得其醤不食、肉雖多不使勝食氣、唯酒無量、不及亂、沽酒市脯不食、不撤薑食、不多食、祭於公不宿肉、祭肉不出三日、出三日不食之矣、食不語、寢不言、雖疏食菜羮瓜、祭必齊如也
先生は、
飯は白いほど好まれ、なますは細かいほど好まれ、古い飯?腐った魚肉は食べなかった。変色したものは食べず、悪臭のするものは食べず、充分、火の通っていないものは食べず、季節はずれの物は食べず、変な切り口の物は食べず、適当な調味料がなければ食べなかった。
肉は多くとらず、酒は制限していなかったが飲みすぎず、出所のわからない食品は食べず、ショウガは食べるがやたらに食べなかった。
王の祭りを手伝ったときには、貰った肉をすぐ調理して食べ、我が家の祭りで出た肉もすぐ食べ、古くなったら食べなかった。食べる時には話をせず、寝るときも静かで、粗末な飯や野菜でも、収穫祭の時には敬虔な態度だった。
●郷党-09
席不正不坐
先生は座席を整えてから座った。
●郷党-10
郷人飮酒、杖者出斯出矣、郷人儺、朝服而立於祚階
先生が村の宴会に参加したときには、老人達が退席するのを待って、それから自分も退出した。村の人たちが鬼よけの儀式をするときには、礼服を着込み、東の階段に立った。
●郷党-11
問人於他邦、再拜而送之
先生は知人に使いを出す時、知人がそこにいるかのように丁寧にあいさつして送り出した。
●郷党-12
康子饋藥、拜而受之、曰、丘未達、不敢嘗
季康子がクスリを贈った。
先生はお辞儀をして受け取ると、こう言った。クスリの性質をよく知らないので今は口にしません。
●郷党-13
厩焚、子退朝曰、傷人乎、不問馬
先生の家の厩舎が焼けた。
先生が朝廷から帰ってくると、大事無いか!?とたずねた。馬の事は聞かなかった。
●郷党-14
君賜食、必正席先嘗之、君賜腥、必熟而薦之、君賜生、必畜之
先生は、王が食物を下されたときには、必ず席を整えて、まず少し食べた。生肉を下されたときには、必ず調理してから祖先にお供えした。王が生きものを下されたときにはちゃんと育てた。
●郷党-15
侍食於君、君祭先飯
先生は、王と共に食事をする時には、毒味の意味で先に食した。
●郷党-16
疾、君視之、東首加朝服、它紳
先生が病気にかかり、王が見舞いに来た時には、礼服を布団の上にかけた。
●郷党-17
君命召、不俟駕行矣
先生は王に召されると、馬車をつなぐのも待たずに、すぐ駆けつけた。
●郷党-18
入大廟、毎事問
先生は、廟の中では、儀礼の事をひとつひとつ確認してまわった。
●郷党-19
朋友死無所歸、曰於我殯、朋友之饋、雖車馬、非祭肉、不拜
友人が亡くなり、その者に縁者がなかった場合、先生は家で葬儀の飾り物をしなさい、そういわれた。友人からの贈り物は、どんなに高価なものでも、祭祀の肉でない限り、拝礼をしなかった。
●郷党-20
寢不尸、居不容
先生は、寝るときは不様にならず、普段はかたちを作らなかった。
●郷党-21
子見齊衰者、雖狎必變、見冕者與瞽者、雖褻必以貌、凶服者式之、式負版者、有盛饌必變色而作、迅雷風烈必變
先生は喪服を着た人に会うと、それが親しい相手であっても必ず姿勢を正した。礼服と、目の不自由な人に会うと、親しい相手であっても必ず様子を正した。喪服の人には敬礼をし、関係者にも礼をした。ご馳走にあずかると、必ず感謝の意を表した。ひどい雷や暴風に遭うと、必ず姿勢を正し、謹慎された。
●郷党-22
升車、必正立執綏、車中不内顧、不疾言、不親指
先生が車に乗られる時には、必ず直立して手綱を握られた。車の中では後ろを振り向かず、大声を発せず、むやみ指を指さなかった。
●郷党-23
色斯擧矣、翔而後集、曰、山梁雌雉、時哉、時哉、子路共之、三嗅而作
驚いて飛び上がり、飛び回ってやっと落ち着く。
先生はこれを見て言った。
あのキジは時節にかなっているね。時節に。
子路は勘違いして、そのキジを食事に出した。
先生は数度臭いを嗅ぐと、席をたった。
11 先進篇
●先進-01
子曰、先進於禮樂野人也、後進於禮樂君子也、如用之、則吾從先進
先生がこう言った。
ベテランは儀礼や音楽については奔放である。若手は儀礼や音楽についてはキッチリして立派である。ならば私は、本質を捉えているベテランのほうに従おう。
●先進-02
子曰、從我於陳蔡者、皆不及門者也
先生がこう言っていた。
陳?蔡の国で私と共に旅をした者達は、もう誰もいなくなってしまった。
●先進-03
徳行顔淵閔子騫冉伯牛仲弓、言語宰我子貢、政事冉有季路、文學子游子夏
徳では顔回と閔損と冉耕と冉雍。
弁舌では宰我と子貢。
政治では冉求と子路。
文学では子游と子夏。
*(孔子の発言かどうかは謎)
●先進-04
子曰、囘也非助我者也、於吾言無所不説
先生がこう言っていた。
顔回はどうも、私の発展を助けてくれる人物ではないらしい。私の意見を喜んで感心しているだけだ。
●先進-05
子曰、孝哉、閔子騫、人不問於其父母昆弟之言
先生がこう言っていた。
閔損は孝行ものだ、その親兄弟の悪口を人から聞いた事がない。
●先進-06
南容三復白圭、孔子以其兄之子妻之
南容は白圭の詩を何度も繰り返していた。先生はその兄の娘を娶せられた。
●先進-07
季康子問、弟子孰爲好學、孔子對曰、有顔囘者、好學、不幸短命死矣、今他則亡
季康子が、弟子の中でだれが学問好きですかと訊いた。
先生は、こう答えた。
顔回が学問好きですが、残念なことに今はもう亡ません。
●先進-08
顔淵死、顔路請子之車以爲之椁、子曰、才不才、亦各言其子也、鯉也死、有棺而無椁、吾不徒行以爲之椁、以吾從大夫之後、不可徒行也
顔回が没した。
父の顔路は先生の車を分解して棺おけを装飾したいと願った。
先生は言った、やはり親の情だな。
私の息子の鯉が没した時にも、分解して装飾しなかった。
私は生活に必要なものを分解してまで装飾をしなかった。
歩いての出仕は少々きついのでね。
●先進-09
顔淵死、子曰、噫天喪予、天喪予
顔回が没した。先生は言った。
ああ、天は私を見捨てられた。もうおしまいだ。
●先進-10
顔淵死、子哭之慟、從者曰、子慟矣、子曰有慟乎、非夫人之爲慟、而誰爲慟
顔回が没した。先生は号泣して泣き崩れた。
お供のものが、先生は泣き乱れておられました、と言ったので、先生が答えた。顔回のような者の為に泣くことができなかえれば、誰の為に泣くのか。
●先進-11
顔淵死、門人欲厚葬之、子曰、不可、門人厚葬之、子曰、囘也視予猶父也、予不得視猶子也、非我也、夫二三子也
顔回が没した。弟子達は立派な葬儀をしたいと願った。
先生は控えなさいと注意したが、弟子達は立派な葬儀を行った。
先生は言った。顔回は私を父のように思ってくれたのに、私は子のようにしてやれなかった。顔回よ、葬儀は私ではなく、弟子達がやってしまった。
●先進-12
季路問事鬼神、子曰、未能事人、焉能事鬼、曰敢問死、曰未知生、焉知死
子路が神に仕える方法を訊ねた。先生がこう答えた。
神に仕える事を考えるよりも、まず人に仕えることを心配したほうがいい。
ついでですが、死とはなんでしょうか?先生は答えた。
生きるということの意味がわからないのに、死のことなどわからないよ。
●先進-13
閔子騫侍側、ギンギン如也、子路行行如也、冉子子貢侃侃如也、子樂、曰、若由也不得其死然
閔子騫は慎み深く、子路は誇らしげで、冉有と子貢は和やかだった。
先生はこのような弟子達に囲まれていた。
先生は言った、子路はまともな最後を遂げられまい。
●先進-14
魯人爲長府、閔子騫曰、仍舊貫如之何、何必改作、子曰、夫人不言、言必有中
魯の国の人が主君の宝物庫をつくったとき、閔子騫は言った。
前のものを使わないのかい?なにも作り変えることもあるまい。
これを先生が聞いてこう言ったという。
あの者は無口だが、口を開くときは的確な事をいう。
●先進-15
子曰、由之鼓瑟、奚爲於丘之門、門人不敬子路、子曰、由也升堂矣、未入於室也
先生がこう言っていた。
子路のひく琴は、私にはどうも??。と言ったので、周りは子路を尊敬しなくなった。先生はこう付け足した。子路は水準以上だよ、あと一息なのだよ。
●先進-16
子貢問、師與商也孰賢乎、子曰、師也過、商也不及、曰、然則師愈與、子曰、過猶不及也
子貢が子張と子夏はどちらが優れていますか?と訊ねた。
先生は子張はやり過ぎる、子夏は足りない、と答えた。
子張の方が優れているということですか?と言うと、先生は、やり過ぎは、足りないのと同じ事だ。と答えた。
●先進-17
季氏富於周公、而求也爲之聚斂而附益之、子曰、非吾徒也、小子鳴鼓而攻之、可也
季氏は家老の分際で金儲けに走っていた。
しかし冉求は季氏のために重税を取り立てて、金儲けを助けた。先生は言った。
冉求の野郎め、やりおったわ!諸君、少しこらしめてやりなさい。
*(こらしめるのは派手意訳で、厳密には太鼓などをならして圧力をかけておやり、のような訳文)
●先進-18
柴也愚、參也魯、師也辟、由也ガン
柴は野暮で、曹参は鈍く、子張はうわべだけで、子路はがさつ、という欠点をもっていた。
●先進-19
子曰、囘也其庶乎、屡空、賜不受命而貨殖焉、億則屡中
先生がこう言っていた。
顔回は理想に近い、生き方を追求するから金が入らない。子貢は独力で商売をして儲け、予測した事はよくあたる。
●先進-20
子張問善人之道、子曰、不踐迹、亦不入於室
子張はいい生き方について訊ねた。先生はこう答えたという。
まず基本を踏まえないと奥義は得られない。
●先進-21
子曰、論篤是與、君子者乎、色莊者乎
先生がこう言っていた。
言っている事、書いた事だけを見ていては、その人が本当に立派か、うわべだけかわからない。
●先進-22
子路問、聞斯行諸、子曰、有父兄在、如之何其聞斯行之也、冉有問、聞斯行諸、子曰、聞斯行之、公西華曰、由也問、聞斯行諸、子曰、有父兄在、求也問、聞斯行諸、子曰、聞斯行之、赤也惑、敢問、子曰、求也退、故進之、由也兼人、故退之
子路が、新しいものを覚えたら、すぐ実践すべきでしょうか?と訊ねた。
先生は、いやいや、まず詳しい人の意見を参考に実践すべきだね。と答えた。
冉求が、新しいものを覚えたら、すぐ実践すべきでしょうか?と訊ねた。
先生は、そうだね、すぐ実践しなさい。と答えた。
これを横から聞いていた公西華が、あれ?子路さんの時と冉求さんの時とでは答えが違います。どういうことですか?と訊ねた。
先生は答えた。冉求は引っ込み思案だから積極的になるよう勧めて、子路は他人の分までやる勢いだから、慎重になるように勧めたのだよ。
●先進-23
子畏於匡、顔淵後、子曰、吾以女爲死矣、曰、子在、囘何敢死
先生が匡という土地で拘留されたとき、はぐれた顔回と合流した。
先生は、顔回のことが心配で心配でしかたがなかった。と言うと、顔回は、先生を残して、くたばれませんよ。と答えた。
●先進-24
季子然問、仲由冉求、可謂大臣與、子曰、吾以子爲異之問、曾由與求之問、所謂大臣者、以道事君、不可則止、今由與求也、可謂具臣矣、曰、然則從之者與、子曰、弑父與君、亦不從也
季子然が、子路と冉求ではどちらが優れた臣下といえるでしょうか?と訊ねた。先生はこう答えたという。はっはっは、子路と冉求ですか?
優れた臣とは、自分の信念に基づいて主君に仕え、必要な時には諌め、身を退きますが、両者はこれは出来ないでしょう、頭数だけの臣というべきでしょうか。
季子然が更に、それでは、主人の言いなりになる人物でしょうか?と訊ねると、先生は、いえ、命令されても親兄弟に手をかけることは絶対ありません。と答えた。
●先進-25
子路使子羔爲費宰、子曰、賊夫人之子、子路曰、有民人焉、有社稷焉、何必讀書然後爲學、子曰、是故惡夫佞者
子路が季氏の補佐をしたとき、子羔という若者を長官に推薦した。
先生が、これではあの勉強盛りの若者を台無しにしてしまう。と言うと、子路は、人をまとめ、政治もします。書を読むだけが勉強とはいえません。と答えた。
先生は言った。やれやれ、口達者なヤツだ。
●先進-26
子路曾皙冉有公西華、侍坐、子曰、以吾一日長乎爾、無吾以也、居則曰、不吾知也、如或知爾則何以哉、子路率爾對曰、千乘之國、攝乎大國之間、加之以師旅、因之以飢饉、由也爲之、比及三年、可使有勇且知方也、夫子哂之、求爾何如、對曰、方六七十、如五六十、求也爲之、比及三年、可使足民也、如其禮樂、以俟君子、赤爾何如、對曰、非曰能之也、願學焉、宗廟之事、如會同、端章甫、願爲小相焉、點爾何如、鼓瑟希、鏗爾舎瑟而作、對曰、異乎三子者之撰、子曰、何傷乎、亦各言其志也、曰、莫春者春服既成、得冠者五六人童子六七人、浴乎沂、風乎舞ウ、詠而歸、夫子喟然歎曰、吾與點也、三子者出、曾皙後、夫三子者之言何如、子曰、亦各言其志也已矣、曰、夫子何哂由也、子曰、爲國以禮、其言不譲、是故哂之、唯求則非邦也與、安見方六七十如五六十而非邦也者、唯赤則非邦也與、宗廟之事如會同非諸侯如之何、赤也爲之小相、孰能爲之大相
ある日のこと、子路?曹皙(曹参の父)?冉求?公西華と先生が雑談を交わしていた。
先生が言った。おまえら、いつもワシは自分達の真価を知ってくれないと言うが、おぬしたちの真価を発揮して一体何をしたいか、教えてくれんか?なーに遠慮はいらんよ。
子路がまっさきに答える。
小国が大国に狙われて、さらに食糧不足に陥っていたら、この俺がはせ参じてそれらを治めて、3年も経たないうちに大国にできます。
子路の発言に先生は答える。がーーはっは~!(爆笑)
冉求が言う。
割に小さい領地を私が治めれば、3年もあれば人民を豊かに出来ます。礼のことは土地の立派な人を頼ります。
冉求の発言に先生は答える。ふむふむなるほどね。
公西華が言う。
僕は何かをやりたいのではなく、廟での会合の時、礼関係の補佐につきたいです。
公西華の発言に先生は答える。ほうほう。
琴を弾いていた曹皙は、演奏を止めるとこう言う。3人のような立派なのとは違いますが???。
先生が答える、いや、気にすることはない、自由に発言しておくれ。
それを聞いて曹皙は言う。
春が終わって温かくなり出した頃、気の知れた数人と共に、川で水浴びをして遊び、高台で風に吹かれ、歌でもうたいながら帰りたいです。
先生はこの発言に、うなづいて、賛成した。
他の3人が退席すると、曹皙は訊ねた。
子路のことを笑っていましたが、なぜでしょうか?
先生が答える。
国を治める時には礼をわきまえるべきだが、子路の言葉はあまりにストレートなので笑っちゃったんだ。
では、ほかの者はどうでしたか?
先生答える。
冉求の場合は、小さいと言っても治めるとなれば大事だ。公西華の場合もやはり大事だが、子路とは慎ましさが違う。公西華などが補佐役になってしまうと、だれが大役につくべきかねぇ。
12 顔淵
●顔淵-01
顔淵問仁、子曰、克己復禮爲仁、一日克己復禮、天下歸仁焉、爲仁由己、而由人乎哉、顔淵曰、請問其目、子曰、非禮勿視、非禮勿聽、非禮勿言、非禮勿動、顔淵曰、囘雖不敏、請事斯語矣
顔回が人間らしさについて訊ねた。先生はこう答えた。
自己の欲?精神を制御して、社会的には、礼を身に付ける。その努力をすれば、世間にも人間らしさが馴染むようになるだろう。人間らしさ、を行うのは自分次第だ、人に押し付け、人を意識してやる類のものではない。
顔回が、それにはどうしたらよいでしょう。と訊ねた。先生が答えた。
礼に外れたことは見ず、礼に外れた事は聞かず、礼に外れた事はしないこと。これらがコツだろう。
顔回はこう言った。微力ながらその言葉を実践してみます。
●顔淵-02
仲弓問仁、子曰、出門如見大賓、使民如承大祭、己所不欲、勿施於人、在邦無怨、仲弓曰、雍雖不敏、請事斯語矣
冉雍が人間らしさについて訊ねた。先生はこう答えた。
家の外で人に会う時には丁寧に対応し、指導者の立場になった時には丁寧に使い、自分が嫌だと感じたことを他人にはしないようにする。これで恨みを買う事がなくなるだろう。
冉雍はこう言った。微力ながらその言葉を実践してみます。
●顔淵-03
司馬牛問仁、子曰、仁者其言也ジン、曰、其言也ジン、斯可謂之仁已乎、子曰、爲之難、言之得無ジン乎
司馬牛が人間らしさについて訊ねた。先生はこう答えた。
人間らしい人は言葉を慎重に使う。
司馬牛が言う。言葉を慎重に使えば人間らしいといってもいいのですか?
先生が答える。言葉の実践が難しいと思えば、言葉も慎重になる。そこがミソだ。
●顔淵-04
司馬牛問君子、子曰、君子不憂不懼、曰、不憂不懼、斯可謂之君子已乎、子曰、内省不疚、夫何憂何懼
司馬牛が君子(立派な人)について訊ねた。先生はこう答えた。
立派な人は心配も恐れもない。
司馬牛が言う。心配も恐れもしないのが立派な人なのですか?
先生が答える。自分の心に問いかけ疚しい事がなければ、何も心配?恐れることはない。
●顔淵-05
司馬牛憂曰、人皆有兄弟、我獨亡、子夏曰、商聞之矣、死生有命、富貴在天、君子敬而無失、與人恭而有禮、四海之内、皆爲兄弟也、君子何患乎無兄弟也
司馬牛が、兄が荒くれて身を滅ぼしそうであった為、悲しんでこう言った。みんな兄弟がいるのに私にだけいない。
子夏が言った。こんなコトワザを知っているかい?「人の生死は、人間の意志ではどうにもならない運命であり、富も名誉も定めによるもの」兄の事は仕方がないさ。人と丁寧に付き合えば、世界中皆兄弟になろう。兄弟のあるなしなど、気にかけることもなかろう。
●顔淵-06
子張問明、子曰、浸潤之譖、膚受之愬、不行焉、可謂明也已矣、浸潤之譖、膚受之愬、不行焉、可謂遠也已矣
子張が聡明について訊ねた。先生はこう答えた。
知らず知らず、じわじわとくる悪口、いかにもせっぱつまったような嘘の訴え、これらに惑わされないようなら聡明といって良いだろうね。
知らず知らず、じわじわとくる悪口、いかにもせっぱつまったような嘘の訴え、これらをよく判断できるようなら、見通しが利くといっても良いだろうね。
●顔淵-07
子貢問政、子曰、足食足兵、民信之矣、子貢曰、必不得已而去、於斯三者、何先、曰去兵、曰必不得已而去、於斯二者、何先、曰去食、自古皆有死、民無信不立
子貢が政治について訊ねた。先生はこう答えた。
食糧を充分に備え、軍備を充分して、人から信頼される事だ。
子貢が言う。この3つの中でどれを優先させますか?
先生は答えた。まず軍備を捨て、食糧を捨てるべきだろう。人からの信頼が得られなければ国家は成り立たない。
●顔淵-08
棘子成曰、君子質而已矣、何以文爲矣、子貢曰、惜乎夫子之説君子也、駟不及舌、文猶質也、質猶文也、虎豹之カク、猶犬羊之カク也
棘子成が言った。
立派な人とは、質朴が大切だ。装飾などは必要ない。
この言葉に子貢が言う。
惜しいねえ、この人の君子観は。これではどんなに速い車でもその言葉に追いつけないね。装飾は質朴のようなものだし、質朴も装飾のようなもので、どちらも大切だ。虎や豹の毛を抜いた皮は、犬や羊の皮と同じ様なもので、性質だけでは人を計れない。
●顔淵-09
哀公問於有若曰、年饑用不足、如之何、有若對曰、盍徹乎、曰、二吾猶不足、如之何其徹也、對曰、百姓足、君孰與不足、百姓不足、君孰與足
王様の哀公が有子に訊ねた。
凶作で財政が苦しいのだが、なにか良い方策はないだろうか?
有子が答える。
いっそのこと税率を引き下げてはいかがでしょう?
哀公が言う。
国の財政が苦しいのになぜ税率を引き下げる事が出来ようか。
有子が答える。
国民が富んでこそ国も活気付きます。国民が苦しいのに、国だけが豊かで一体なにができましょうか。
●顔淵-10
子張問崇徳辨惑、子曰、主忠信徒義、崇徳也、愛之欲其生、惡之欲其死、既欲其生、叉欲其死、是惑也、誠不以富、亦祇以異
子張が徳を高め、迷いを明確にすることを訊ねた。先生がこう答えた。
忠と信を基本にして義へと移るのが、徳を高めることになろう。
相手を愛している時には、いつまでも長生きして欲しいと思うが、ひとたび憎しみを抱くようになると、相手の安否などなんとも思わなくなる。この気持ちの移り変わりが迷いといえる。
●顔淵-11
齊景公問政於孔子、孔子對曰、君君。臣臣、父父、子子、公曰、善哉、信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾豈得而食諸
斉の王様の景公が政治について訊ねた。先生がこう答えた。
ひとたび王になれば、王は王らしい姿勢をとり、臣下になれば、臣下は臣下としての務めを果たし、親になれば、親らしい態度を心がけ、子として生まれたなら、子としての務めを果たす事です。
景公が言う。
なるほど、なるほど。王がしっかりせず、臣下が支えず、親が育てず、子が親を思いやらねば、物が豊かになった所で、おちおち生活も出来ないな。
●顔淵-12
子曰、片言可以折獄者、其由也與、子路無宿諾
先生がこう言っていた。
一言聞いただけで、ものの判断ができるのは、子路ぐらいだね。子路はいったん引き受けたことは、すぐに実行するのが常だった。
●顔淵-13
子曰、聽訟吾猶人也、必也使無訟乎
先生がこう言っていた。
訴訟の裁きをやれといわれれば人並みにこなせよう。しかし私は、訴訟をほとんど必要としない国づくりを目指したいのだ。
●顔淵-14
子張問政、子曰、居之無倦、行之以忠
子張が政治について訊ねた。先生はこう言っていた。
どんな地位でも初心を忘れず、どんな仕事でも真剣にやってみせることだ。
●顔淵-15
子曰、君子博學於文、約之以禮、亦可以弗畔矣夫
先生がこう言っていた。
様々に広く吸収し、それを慎重に実践するなら、道を外れる事はなかろう。
●顔淵-16
子曰、君子成人之美、不成人之惡、小人反是
訳1
先生がこう言っていた。
立派な人は、他人の善行には協力するが、悪事には荷担しない。小ずるい人は逆で、善行には協力せず、悪事には荷担する。
訳2
先生がこう言っていた。
立派な人は、他人の粗さがしをするよりも、長所を誉めるようにする。小ずるい人は逆で、他人の長所を見ずに、粗さがしばかりして、その部分をけなす。
訳3
先生がこう言っていた。
立派な人は、相手の長所を見抜き、それを伸ばす手伝いをし、欠点が大きくならないようにする。小ずるい人は逆で、相手の長所を押さえつけ、欠点を強調して陥れる。
●顔淵-17
季康子問政於孔子、孔子對曰、政者正也、子帥而正、孰敢不正
季康子が政治について訊ねた。先生はこう答えた。
政治とは曲がったものを正す事です。指導者のあなたがまっすぐ努めれば、誰もがまっすぐ努めましょう。
●顔淵-18
季康子患盗、問於孔子、孔子對曰、苟子之不欲、雖賞之不竊
季康子が盗賊の横行を心配して訊ねた。先生はこう答えた。
上に立つ者が私利私欲に走らなければ、国民もしだいに欲に走らなくなるでしょう。
●顔淵-19
季康子問政於孔子、曰、如殺無道以就有道、何如、孔子對曰、子爲政、焉用殺、子欲善而民善矣、君子之徳風也、小人之徳草也、草上之風必偃
季康子が政治について訊ねた。
秩序を外れた者を排除し、秩序を守る者を育成するのはどうでしょう?
先生が答える。
政治をするのに、排除する必要はありません。まずあなた自身が秩序を守れば、国民も自然と守るようになりましょう。例えるなら、指導者が風で、国民が草です。草は風にあたればなびきます。
●顔淵-20
子張問、士何如斯可謂之達矣、子曰、何哉、爾所謂達者、子張對曰、在邦必聞、子曰、是聞也、非達也、夫達者、質直而好義、察言而觀色、慮以下人、在邦必達、在家必達、夫聞者色取仁而行違、居之不疑、在邦必聞、在家必聞
子張が訪ねた。
どのようになれば達人と言えるでしょうか?
先生が言う。
ん?お前さんが言う達人とはどのようなことかな?
子張が答える。
周りの評判が良く、仲間内からも評判が良い事です。
先生が言う。
ふむふむ、私に言わせればそれは評判が良いだけで、達人ではなさそうだ。評判が良くても、かならずしも達人とは限らない。私が思う達人とは、正直で信義を貫き、人の言葉を良く聞き、相手の事を見て、慎重に接し、いかなる時にも実力を発揮することだ。評判が良いという事は、表向きよく見せて、それで周りからの評判が良いだけの場合もあり得る。
●顔淵-21
樊遅從遊於舞ウ之下、曰、敢問崇徳脩慝辨惑、子曰、善哉問、先事後得、非崇徳與、攻其惡無攻人之惡、非脩慝與、一朝之忿忘其身以及其親、非惑與
樊遅がお供をして、雨乞いの台で遊んでいた時に訊ねた。
あの~、徳を高めて、よこしまな気持ちを無くし、迷いを明確にするにはどうしたら良いでしょうか?
先生はこう答えた。
ほほう、面白い質問だね。仕事を第一と考え、報酬は二の次と設定する。これが徳を高めることになるかなぁ。自分を厳しく律し、他人にやさしく接すること、これがよこしまな気持ちを無くすカギになるかなぁ。一時の怒りにわが身を忘れ犯罪を起こし、親族にまで災いをもたらす事が迷いになるかな。
●顔淵-22
樊遅問仁、子曰愛人、問知、子曰知人、樊遅未達、子曰、擧直錯諸在、能使枉者直、樊遅退、見子夏曰、嚮也吾見於夫子而問知、子曰、擧直錯諸枉、能使枉者直、何謂也、子夏曰、富哉是言乎、舜有天下、選於衆擧皐陶、不仁者遠矣、湯有天下、選於衆擧伊尹、不仁者遠矣
樊遅が思いやりについて訊ねた。先生はこう答えた。
他人を愛する事だ。
今度は、智について訊ねた。先生はこう答えた。
人をよく観察する事だ。
樊遅はまだ釈然としなかったので先生がこう言った。
正直者を嘘つきよりも重く用いれば、嘘つきは正直者となろう。
樊遅はその後、子夏と会って話した。
先生がさっき「正直者を嘘つきよりも重く用いれば、嘘つきは正直者となろう」と言ったんだけど、これってどういう意味だろうか?
子夏はこう言った。
深いねその言葉は、舜が天下を取ったとき、大勢の中から選んで皐陶をひきたてたので、真っ当でない者共は遠ざかった。湯が天下を取ったときも、大勢の中から選んで伊尹を引き立てたので、真っ当でない者共は遠ざかったのだ。
おきかえ:正直者?嘘つき→有能?無能/謙虚?傲慢など
●顔淵-23
子貢問友、子曰、忠告而以善道之、無自辱焉
子貢が友人関係について訊ねた。先生はこう答えた。
友人が過ちを犯したら改めるように忠告するのが好ましいけれど、どうしても言う事を聞かない場合は、それ以上口を出さない方が良い。しつこく言い過ぎて、好んで気まずい雰囲気を造る事は無い。
●顔淵-24
曾子曰、君子以文會友、以友輔仁
曹参がこう言っていた。
趣味?教養を通じて交友を深め、交友を通じて自分を成長させる。交友はこうありたいものだ。