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50 理由

来源:庭三郎 作者:日语港 时间:2010-05-16 阅读:4322

50  理由 

     50.1  ~から        
       50.2  ~ので               
      50.3  ~ために       
50.4  ~て         
         50.5  ~おかげで/せいで   
50.6 ~ものだから/もので
50.7 ~かといって
50.8 ~その他 
50.9 疑問・否定 
50.10 ~からか/ためか
50.11 まとめ


50.1  ~から
 ①理由 [疑問と否定] ②判断の根拠 ③その他  [~のだから]
50.8 その他        
50.8.1 ~バカリニ
50.8.2 V-カラ(ニ)ハ
50.8.3 ~以上(ハ)
50.8.4 V-上ハ
50.11 まとめ         
50.11.1 理由表現の重なり
50.11.2 理由節のテンス   
50.11.3 ハとガ       


 理由を表す表現はいろいろありますが、基本的なものは、カラ、ノデ、タメ
ニ、テの4つです。カラとノデは使用範囲が広く、頻度も高いので、どう違う
かということがよく問題にされます。


50.1 ~から
 「~から」はいちばん広く使われます。述語との接続もかんたんです。まず
は述語との接続のし方から。「から」は丁寧形にも普通形にも接続できます。
これは、言い換えると、この節の独立性が強く、独立した文に近い性質をもっ
ているということです。「~が、~」ほどではありませんが。

     よく勉強しましたから、漢字も書けます。    (動詞)
     よく勉強したから、漢字も書ける。
     ここはうるさいですから、あちらへ行きましょう。(イ形容詞)
     ここはうるさかったから、あっちへ行こう。
     明日は暇ですから、明日やります。       (ナ形容詞)
     明日は暇だから、明日やるよ。  
     私は日本人ですから、日本語しかできません。  (名詞述語)
     私は日本人ではないから、日本語ができない。

 否定や過去の形にも接続できます。
 複合述語の類にもかなり自由に接続しますが、意志・依頼・命令などには、
そもそも意味的に付きません。

     彼にさせたかったから、彼を呼んでおいた。
     彼女にも来てほしいから、声をかけておいて下さい。
     彼も来るだろうから、彼の分も用意しておこう。
×一緒に行こう/行って下さい/行きなさい から、~

 主節の文末のムードは自由です。

[意味]
 「~から」の表す意味は、大きく三つに分けられます。

① 理由
 「AカラB」という時、話し手がBの理由としてAをあげるという意味を示
します。上に挙げた例文は皆この例です。ただし、一般的には理由と考えにく
い場合もありますが、これは文法の問題ではないでしょう。     

     あいつの顔が気にくわないから、殴ったんだ。
     嫌だから嫌(なん)だ。

 理由節を含む文は「~のだ」が主節に出やすくなります。それは、理由節と
いうのは、主節の内容が文脈ですでに明らかになっていて、その理由を説明す
るということが多いからです。

 理由の部分を特に示したい場合は、「Bのは、Aカラだ」という形を使うこ
ともできます。この形は「強調構文」(→57.5)の一種です。

     暇だったから、本を読んでいた。
     本を読んでいたのは、暇だったからだ。

 この「~のは」は文脈により省略されます。

     「どうして会社やめたの?」「つまんないからよ」

 主節を省略して、「~から。」の形で文を終わることがよくあります。

「帰りますか」「ええ、もう6時ですから(帰ります)」
     「どうして見ないんですか」「見たことがありますから」

以上の二つの形を混同しないように注意が必要です。

   a 店は客でいっぱいです。特売日だからです。
   b 店は客でいっぱいです。特売日ですから。

 aは「店がいっぱいなのは~」という強調構文の一部で、従属節のほうが省
略されています。「~だからです」の「だ」に注意して下さい。
 bは主節の省略です。(あるいは、bの二つの文全体が一種の「倒置」とも
考えられます。)イ形容詞の場合は、形が似てきます。

     「どうして買わないんですか」
     「ちょっと大きいからです/ちょっと大きいですから」

 普通体だと区別がつきません。

     「どうして買わないの?」「ちょっと大きいからよ」

「買わないのは、大きいからよ」「大きいから買わないのよ」のどちらとも考
えられます。

[疑問と否定]
 理由を聞く疑問表現は「なぜ/どうして~か」ですが、これまでの例でもわ
かるように「~のだ」をつけることがよくあります。

     なぜ来たのですか。

 これは、「来たかどうか」つまり述語の内容が実現したかどうかを聞いてい
るのではなく、来た理由を聞いています。このような場合に「~のか」がよく
使われることは、「42.疑問文」で述べました。 

その答えにも、
     ちょっと心配だったから、見に来ました/見に来たんです。

のように「~のだ」がよくつきます。

 ある理由を否定する場合も、この「~のだ」あるいは「~わけだ」が使われ
ます。

     嫌だから行かないのではありません。行く必要がないから行かない
     のです。

② 判断の根拠
 例えば、次のような例で、「理由」を表すと考えると、少し変です。

     だんだん空が暗くなって来たから、もうすぐ降り出すでしょう。

 「だんだん空が暗くなって来た」は「もうすぐ降り出す」理由と言えるでし
ょうか。雨が降る理由(原因)は何かよくわかりませんが、「暗くなって来たか
ら」降るわけではありません。

 この場合の「から」は、「もうすぐ降り出す」と判断するのに、「暗くなっ
た」ことが材料(根拠)となったことを表します。

     「田中さんはもう帰りましたか」
     (机を見て)「まだかばんがあるから、その辺にいるでしょう」

「その辺にいる」理由は、何かの用事でしょう。「から」は、「かばんがある」
ことから「まだいる」と判断した、ことを示します。

     彼女は、「興味ない」って言ってたから、来ないよ。
     「今何時かなあ」「さっき、鐘が鳴っていたから、12時半ぐらい
     じゃないか」

「なぜ12時半か」という問いに答えはないでしょう。日本標準時のシステ
ムでそう決めているから?「なぜ12時半と推測するか/言えるか」なら答え
られます。「さっき鐘が鳴っていた」はそのための根拠になります。

③その他
 「~から」には理由・根拠を表すとは言えない例が意外に多くあります。ふ
だんは意識することなく使っているのですが、あらためて考えると説明に困る
ような例です。

     ビールが冷やしてあるから、お風呂のあとで飲んでね。
隣の部屋にいますから、何かあったら呼んで下さいね。
     以下の部品が入っていますから、まず確認して下さい。
バスがあるそうだから、それに乗りましょう。

 「ビールが冷やしてある」のは「飲む」理由にはなりません。「のどが渇い
たから」あるいは「飲みたいから」飲むのでしょう。「隣の部屋にいる」こと
も、「呼ぶ」理由にはなりません。「何か問題があり、自分では解決できない
から」、人を呼ぶのでしょう。「何かあったら」という表現がちょうどそのこ
とを示しています。

     何かあったら呼ぶ → 何か(問題が)あった → 呼ぶ

 では、「隣の部屋にいる」ことはどういう関係があるのでしょうか。「呼ん
で下さいね」という依頼表現が意味を持つためには、「呼べる」ところにいな
ければなりません。

 つまり、依頼というムードを成り立たせるのが、この「~から」の部分です。
「(ビールを)飲んでね」と言うためには、どこかにビールが用意してなければ
なりませんが、聞き手はそれを知りません。それを教え、この文に意味を持た
せるのが、「(冷蔵庫に)ビールが冷やしてあるから」という部分です。
 「部品」や「バス」も、「確認」や「乗る」対象として必要なものです。そ
れがあることを保証して、「~て下さい」「~ましょう」という依頼や勧誘を
成り立たせるのが、「~から」です。

 もっと説明しにくい例もあります。

嘘でもいいから、許すと言って。
     頼むから、泣かないでくれよ。

 「お願いだから、~」というのもよくある言い方です。

 この「理由と言えないカラ」の例は、主節が依頼・命令・勧誘などの、聞き
手への働きかけを意味するムードを持つことが特徴です。依頼などの「理由」
ではないのですが、その依頼などを成り立たせる状況を示しています。

次の例などは、上の例に似ていますが、もう少し一般の理由表現に近いもの
です。

         名前を呼びますから、呼ばれた人は返事をして下さい。
昼休みになったから、何か食べに行こう。

 これらの表現の底にあるのは、次のような論理です。

     名前を呼ばれる → 返事をするのが当然
     昼休みになる → いつも食事に行く

「何か食べに行く」理由が「昼休みになった」ことではありませんが、上のよ
うな論理があり、それに従って結びつけられているのです。

[~のだから]
 「~から」の前の述語が「~のだ」の形をとると、「~のだから」となりま
す。話しことばでは「~んだから」ともなります。

 Aを事実として認め、それを理由としてBの主張を述べます。
 Bは単に事実を述べる文ではなく、話し手の気持ちを表す文になります。命
令・依頼・勧めなどのムードや、評価を示す表現などが来ます。「こんなに」
「せっかく」などの副詞的表現が一緒によく使われます。     

     ここまでがんばったんだから、あと少しやろう。
がんばってもできなかったんだから、仕方ないじゃないか。
     せっかく来たんだから、ゆっくりして行きなさいよ。
     あんな失敗をしたのだから、顔を出せるはずがなかった。
     はっきりそう言ったのだから、彼を信じてやりたかった。
     彼女が来たのだから、私は帰ることができた。しかし帰らなかった。

 Aが話し手の気持ちをその場で示すような表現だと、「~のだから」は使え
ません。

     じゃあ、私もやりますから、あなたも少しはやって下さい。
    ×じゃあ、私もやるんですから、あなたも少しはやって下さい。
     彼がやっているんだから、お前も少しはやれよ。

「私もやる」のは、今表明された事柄で、「彼がやっている」のは事実です。

「は」の付いた「~から(に)は」の形はあとでとりあげます。


50.2 ~ので  
 ノデとカラの違いはよく問題とされますが、初級でこの二つを教えてみて大
切だと思うのは意味の違いよりも接続の違いです。

 まず、動詞とイ形容詞の丁寧体との接続ですが、次の四つを見て下さい。

     雨が降ったから、涼しくなりました。
     雨が降ったので、涼しくなりました。
     雨が降りましたから、涼しくなりました。
     雨が降りましたので、涼しくなりました。
     ここはうるさいから、あちらへ行きましょう。
     ここはうるさいので、あちらへ行きましょう。
     ここはうるさいですから、あちらへ行きましょう。
     ここはうるさいですので、あちらへ行きましょう。

 初級のレベルでは「-ますので」は丁寧過ぎるように感じられます。

 文全体が非常に丁寧な文体なら、「-ますので」も使われます。

     すぐ車が参りますので、ここで少々お待ち下さい。
     こちらにございますので、どうぞご自由にお使い下さい。

 「ので」の使い方で注意すべきなのは、ナ形容詞と名詞述語の場合です。

 丁寧体の場合は、丁寧過ぎることを除けば、形の上では何も問題ありません。

     あしたは暇ですので、あした行くことにしようと思います。
     この部分が木製ですので、とても軽くなっています。

 普通体では「だ」が「な」になります。ナ形容詞だけではなく、名詞述語も
「-な」になる点が注意すべき所です。

     とても元気なので、安心しています。
     まだ子供なので、速く走れません。

 名詞述語でも「な」になるのは、「~のです」の場合と同じです。 

 複合述語にも接続します。

     雨が降りそうなので  降るそうなので  行きたいので
     雨が降るそうですので、かさをお持ちになった方が・・・

 ただし、「×~だろうので」は言えないところが「~から」と違います。

 ノデはカラに比べると、文末制限があります。命令・意志・勧誘など、強い
ムードの文末を持つ文では使われにくいと言われています。

    ?たくさんあるので、どんどん使おう!
     たくさんあるので、どんどん使ってしまいましょう!
     たくさんあるから、どんどん使おう!
    ?ここにあるので、これを使え/使いなさい。
     ここにあるから、これを使え/使いなさい。
    ?ここにたくさんあるので、これを使って下さい。
     ここにございますので、これをお使い下さい。

 しかし、単にムードの制限というよりも、丁寧さの違いという解釈も成り立
ちます。つまり、普通体の意志形や命令形は相手に対する配慮という点で、か
なり強い口調なので、「ので」の柔らかさとは合わない、という解釈です。

 学習者のよくやる誤用は、

    ×おいしいだから、おいしいなので  
    ×きれいだので、きれいので

という形にしてしまうことです。初級の段階でしっかり身につけておかないと、
かなり後まで治らずに残ってしまいがちです。

 「は」が付いたように見える「~のでは」の形は、「の+ては」で、条件表
現です。「49.7.2 ~のでは」ですでに取り扱いました。


50.3 ~ため(に)
 「~ために」は理由を表わす場合と、目的を表わす場合があります。ここで
は理由を表わすものだけを扱います。書き言葉では「に」が省略されて「ため」
となることがよくあります。

 述語の普通体に接続します。ナ形容詞は「-な」、名詞述語では「-の」ま
たは「-である」の形に接続します。その際、単なる名詞か名詞述語かの見分
けの問題があります。

     それを知らなかったために、失敗した。
     国土が狭いため(に)、人口密度が高い。 
     事故のために、列車が遅れている。 
     夫が外国人であるために、いろいろとめんどうなことが多い。

 「事故」はある事態を表し、その事態が原因となって「列車が遅れる」ので
すが、「(何かが)事故だ」という名詞述語ではありませんから、

    ×事故であるために、列車が遅れている。

とは言えません。

 逆に「外国人」のほうは、「外国人のために」とすると「恩恵」の意味にも
なります。

 「AためにB」のAが「確定したこと」であることが必要です。過去のこと
か、現在の状態、または将来のことでも、実現がほぼ確実な予定などです。

     台風が来るため、明日から天気が崩れるでしょう。
     来年留学するため、日本語を学ばなければならなくなった。
     来月皇太子がこの町を訪問するため、道路が整備されている。

 もし、意志や将来のことの表現だと、「目的」の意味を表わすことになって
しまいます。

     将来日本に留学するために日本語を勉強しています。
     平和な世界を実現するために力を合わせよう。 

これらの文は、目的の意味に理解されます。

 推量や伝聞の複合述語はAに使えません。

    ×彼女が来るそうなため、~   (来るそうだから)
    ×彼女が来るらしいため、~   (来るらしいから)

 主節の述語は、意志や依頼などのムードになりません。

    ×寒いため(に)、何か暖かいものを食べよう。(○寒いから)
×雨が降るため、かさを持っていって下さい。(○降るから)

 上の例にもあるように、「~だろう」「~なければならない」などのムード
は可能です。

 以上のような制限のため、客観的な因果関係を示すことが多く、書きことば
でよく使われます。

 「AためにB」を「Bのは、Aためだ」の形にすることがよくあります。形
式名詞なので「と」でつなぐことができます。(→「57.5 強調構文」)

     昇進が遅かったのは、私が女であるためです。
     太ったのは、食べ過ぎたためと、ジョギングをさぼったためだ。
    ×太ったのは、食べ過ぎたためで、ジョギングをさぼったためだ。

「~で」で結べないのは、Aが一つの要素でなければならないためです。

 「~ためのN」の形で名詞を修飾することができます。

     それを知らなかったための失敗

 疑問は、「~から/ので」と同じように「なぜ/どうして」で聞きます。
 「何のために」という形は、目的の意味になってしまいます。

     なぜ/どうして 雨が降るのか。
     何のために雨が降るのか。(目的)

 「は」をつけて「~ためには」とすると、目的になり、理由の表現としては
使えません。「~ためは」という形はありません。

?来年留学するためには、日本語を学ばなければならなくなった。

50.4 ~て  
 「~て」の用法については、「並列」のところで紹介しました。「~て」自
体は二つの節を結ぶだけで、それがどんな意味になるかは前後の節の意味内容
の関係による、とよく言われます。
 「原因・理由」の意味になるのは、まさに前の事がらによって後のことが起
こっているという見方を話し手がしていることによります。

     おなかが空いて、死にそうだ。
     彼女が来てくれて助かった。
     暑くて、仕事ができないだろう。
     おもしろくて止められなかった。
     とても親切で、評判がいい。
     この子はまだ小学生で、中学の数学は何も知らない。

 最後の例は「並列」ともとれます。境界ははっきりつけられません。

 後の節は話し手の意志や依頼・希望などのムードを含まない事実の描写(推
量を含む)に限られます。

    ×おなかがすいて、ご飯を食べよう。
    ×これは汚くて、食べてはいけません。(○汚いから)    
    ?おなかがすいて、ご飯を食べた。
    ?おなかがすいて、ご飯が食べたい。(○ご飯が食べたくなった)

 「は」の付いた「~ては」という形はまったく違った文型になります。その
一つの用法は「条件」のところで扱いました。


50.5 ~おかげで/せいで
 「~おかげで」は、好ましい結果がもたらされた原因となる人・事柄に対し
て感謝する気持ちがあることを表しますが、わざと皮肉に使うことがよくあり
ます。その場合、次の「~せいで」と近くなります。

     彼女がきてくれたおかげで、みんなが助かった。
     たまたまバスが遅れたおかげで命拾いした。
     こんなにうまく行ったのは、君が手伝ってくれたおかげだよ。
     まったく、あいつのおかげで、ひどいことになっちゃったよ。(せ
     いで)

 「V-てくれた/くださった」の形でその主体に対する感謝の気持ちを表す
ことが多いです。

 「せいで」も原因を示しますが、悪い結果をもたらした、好ましくない事柄
を示します。    

     いやな奴が来たせいで、パーティーがすっかりつまらなくなった。
     こんな結果になったのは、準備がいい加減だったせいだ。
     事故を起こしたのは、会社が無理に急がせたせいだ。
     体に力が入らないのはダイエットをしているせいかもしれない。

 「~のは、~せいだ」の形で原因追求をすることが多いです。形容詞や名詞
述語も受けます。

     それがわからなかったのは、まだ幼かったせいだろう。
     入社試験に落ちたのは、彼が外国人であるせいだ。


50.6 ~ものだから/もので
 形式名詞の「もの」を使うと、ある種の意味合いが加わります。話し言葉で
は「もん」の形がよく使われます。 

     ちょっと忘れ物をしたもんで、遅れちゃってすみません。
  あの人は、よくそういうことを言うものだから、皆に嫌われて・・・
     ちょっと近くまで来たものだから、寄ってみました。
 忘れっぽいものだから、いつも家内に怒られています。

 自分に関して、言い訳っぽく理由を言うことが多いです。主節はある事実を
述べていて、その理由を説明します。
    

50.7 ~からといって
 「Aを理由としてBする(というのはよくない)」ということを表します。
話しことばでは短く「~からって」となります。

         宝くじが当たったからといって、ぜいたくしたらすぐなくなるよ。
     おいしいからといって、冷たいものを食べ過ぎてはいけません。
     まだ子供だからといって、何でも許されるわけではない。
     わざとじゃないからといって、謝らないのはよくない。
     暑いからって、こんなに冷房しちゃ、かえって体に良くないよ。

 「宝くじが当たったからぜいたくする」という考え方を批判しています。こ
こで「~から」を使うと、おかしなことになります。

  ?おいしいから、冷たいものを食べ過ぎてはいけません。
 ?暑いから、こんなに冷房しちゃ、体に良くないよ。

「おいしいからいけない」「暑いから体に良くない」ことになってしまいます。


50.8 その他
理由を表す表現は他にもいろいろあります。いくつかを見てみます。理由に
入れるか、他の表現のところに入れたほうがいいか迷うものもあります。

50.8.1 ~ばかりに
 そのことのために悪い結果になってしまったことを表します。動きの動詞は
過去形です。状態動詞や形容詞は現在形でも可です。

     小さなうそを言ったばかりに、うそをつき続ける羽目になった。
     なまじ英語ができる/た ばかりに、難しい役をやらされている。
     規則を知らなかったばかりに、高い罰金を取られそうだ。
     この魚は、味がいいばかりに、人に追いかけ回され、獲りつくされ
     た。

50.8.2 V-から(に)は
 意志的な動作を受けて、そのためには次のことが必要になる、という表現で
す。主節には、必要・意志・命令などのムードの表現が来ます。次の「~以上
(は)」の例もだいたい「からには」で言えます。

 「V-からは」は古い言い方になり、歌詞などに現れるようです。

     人を批判するからには、それなりの覚悟が必要だ。
     外国人に教えるからには、相手の文化を知ろうとすべきだ。   
     会員であるからには、あなたにも責任の一部はある。 
     引き受けたからには、最後までやりなさい。
     明日は東京へ出ていくからは、何が何でも勝たねばならぬ。

50.8.3 ~以上(は)  
 「V-からには」とかなり近い表現です。上の例はみな「以上は」で言い換
えられます。

     高い辞書を買った以上は、使わないと損だ。
     このことを知られた以上は、生かしてはおけない。
     証人となる以上は、全部話すつもりです。

 次の例は否定を受けていて、少し意味合いが違います。否定的な状況を受け
て、主節も否定的な内容が来ます。これは「からには」では落ち着きません。

     彼女にその気がない以上、お見合いを勧めてもムダですよ。
     彼が証人台に立ってくれない以上、我々としては打つ手がない。

「~のでは」に近い用法です。

50.8.4 V-上は 
 「~からには」に近い表現です。ある特別な状況の下で、決意を表す、ある
いはうながす感じです。

     秘密を知られた上は、生かしてはおけない。
     こうなった上は、逃げも隠れもしない。どうにでもしろ。
 会長に立候補する上は、はっきりした方針を打ち出すべきだ。


50.9 疑問・否定
理由表現の疑問・否定にはちょっと問題があります。疑問や否定の焦点がど
こに来るのかという問題です。

     雨が降ってきたから、中止にしますか。

 試合を続けようかどうか考えて、雨を理由に「中止」を決定するかどうか質
問しています。別に問題はなさそうですが、過去にすると、

    ?雨が降ってきたから、中止にしましたか。

なんとなく落ち着きません。疑問文でなければ安定しています。

     (この前の試合は)雨が降ってきたから、中止にしました。

「~のだ」を使った疑問文にすると安定しますが、

     雨が降ってきたから、中止にしたんですか。

とすると、「中止にしたかどうか」ではなく、「中止にした」理由が「雨かど
うか」を質問しています。つまり、従属節が疑問の焦点になっています。これ
は「~のだ」の用法の一つです。(→42.4)

 上の不自然な例は、「中止にした」ことがすでに知られているような状況し
か想定できないために、不自然に感じられるのです。「中止にしたかどうか」
を問うなら、理由節は不要です。

     この前の試合は、中止にしましたか。

 理由節をわざわざ言う以上、そこが質問の焦点になるはずで、文末を「~の
ですか」としなければなりません。(→「42.4 疑問の焦点と前提」)

 これは、「~ので」でも同じです。

?雨が降ってきたので、中止にしましたか。
      雨が降ってきたので、中止にしたんですか。

 「~て」はAとBの結びつきが単純なので少し違います。

 お金がなくてバスに乗れませんでしたか。

 これは、「お金がない→バスに乗れない」全体が一つの事柄として受け取ら
れ、そのことが起こったかどうかを聞いています。「~のですか」を使って、

     お金がなくてバスに乗れなかったんですか。

とすると、「バスに乗れなかった」理由は「お金がなかった」ことかどうかを
聞く意味にもなります。イントネーションやポーズの取り方によっても違うよ
うです。

 理由節が否定の焦点になる場合を考えます。つまり、その理由でなく、外の
理由で主節のことが起こったのだ、という場合です。

     勉強が嫌いだから学校へ行きたくないんじゃないんだ。友だちにい
     じめられるから行きたくないんだ。

理由の否定は「~のではない/わけではない」などによって表されます。

 「~ので」ではちょっと言いにくいようです。

    ?彼女が金持ちなので結婚したのではありません。
     彼女が金持ちだから結婚したのではありません。

     
50.10 ~からか/ためか
 理由表現には、他の連用節とは違った特徴があります。「か」を付けて不確
定な表現にすることができるのです。「それが理由かどうかはわからないが」
という気持ちです。

      宣伝が足りなかったからか、会場はがらがらだった。
     何もしてあげなかったためか、彼女の態度は冷たかった。
     おさい銭をはずんだおかげか、しばらくいいことが続いた。
     前の晩に雨が降ったせいか、空気がしっとりとしている。
何を思ってか、彼は突然こんなことを言いだした。
     そのことが災いしてか、彼の昇進は取り消された。

 「~てか」はあまり使われませんが、他の形はよく見るものです。「~ので
か」という形はありません。「~のか」という形がありますが、これは以上の
理由表現とは違うようです。上の例は、多く「~から/ために」などの形にし
ても意味が通りますが、「~のか」は対応する理由表現が成り立ちません。

     目覚ましが鳴らなかったのか、目が覚めたら9時だった。
     どこへ行ったのか、部屋には彼女の姿はなかった。
     cf. 宣伝が足りなかったから、会場はがらがらだった。
      ?目覚ましが鳴らなかったので、目が覚めたら9時だった。

 「理由」が不確かなことを表すのではなくて、単に状況の説明の一つを疑問
の形で出しているだけです。これは「59.複文のまとめ」でとりあげます。


50.11 まとめ
50.11.1 理由表現の重なり
理由が二つ重なる場合、つまり、理由となる事柄が成り立つためにまた別の
ことが理由となっている場合を考えます。

    雨が降って涼しくなったので/から、二人で散歩に出た。

 「散歩に出た」のは「涼しくなった」からですが、では「涼しくなった」の
はなぜかというと、「雨が降った」からです。この「~て」と「~ので/から」
を逆に使うことはできません。「~て」のほうがかかる範囲が狭い、と言うこ
とができます。

   ×雨が降ったので/から 涼しくなって散歩に出た。

 次の例も同じです。

    お金がなくてバスに乗れなかったから、歩かざるを得なかった。

 「~ために」と「~ので」を使った例。

    会社が倒産したため、収入がなくなってしまったので、苦しい状態が
    しばらく続いた。

「収入がなくなってしまい、~」の形にして、文構造としては並列にし、そ
こに理由の意味合いを持たせたほうがいいでしょう。

ちょっと無理のある例かもしれませんが、「~て」「~ために」「~ので」
を一緒に使った例。

    この冬は暖かくて氷が十分厚く張らなかったためにスケート場が使え
   なかったので、十分な練習ができなかった。

 さらに、「~できなかったから、大会の成績はひどかった」などとするのは
無理でしょう。

50.11.2 理由節のテンス
 「理由-行動」「原因-結果」という論理的順序からすれば、次の順序は当
然のことと言えます。

     人に会ったので、帰りが遅くなった。[会った→遅くなった]
けがをしたので、足が痛い。        [けがをした→痛い]

しかし、次のような文も珍しくありません。

       人に会うので、急いで会社を出た。 [出た→会う]

 つまり、従属節の現在形が、主節より以後、将来を表しています。「急いで
出た」理由は、「人に会う」という(その時点では)将来の予定です。

 次の文もふつうの文です。従属節の現在形が将来のことを表しています。

明日試験があるので、勉強している。[勉強する→試験がある]

 次の例はちょっと特殊なものです。

     (今日で全部終わったつもりだったけれど、)
     明日まだ試験があったので、今から勉強しなきゃならない。

 発話時より将来のことに過去形が使われていますが、この「あった」は「想
起」です。「ある」と同じです。一般的に従属節の過去形が将来のことを表せ
るわけではありません。(それができるのは連体節です。「明日早く来た人に
あげる」→ 56.5)

従属節の過去形は、過去のことを表すのがふつうです。ただし、最初の例の
ように主節より以前のこととは限りません。

     昨日9時から試験があったので、朝早く起きた。[起きた→あった]

 動きの動詞の現在形が、主節より以後を表すとも限りません。

     犬がしきりに吠えるので、窓から外を見た。   [吠える→見た]

 「吠えた」とももちろん言えます。

 状態性の述語の現在形は、主節の過去と同時を指すことができます。  

暇な/だった のでぶらぶらしていた。
     大きすぎる/た ので中に入らなかった。

 最初の「理由-行動」という「順序」の話に戻ります。理由節の現在形が主
節より後のことを表すのは、一見この順序に反するように見えます。しかし、
その場合、将来の「予定」が確定していると話し手が思っている、ということ
が大事なのです。

友だちが来るので、ビールを買っておいた。

というとき、「買った」時点で、「友だちが来る」ことは確定しているのです。
言い換えれば、「来るから買う」とは「来ることになっているから買う」とい
うことを表しています。

50.11.3 「は」と「が」
 主体が同一の場合、「Nは」がふつうです。

     私は、疲れて/疲れたので/疲れたから/疲れたため、休んでいた。

 「Nが」は数が少ないでしょう。

     兄が、受験勉強で疲れて、倒れてしまった。

次の例のように、両方に同一主体の「Nが」が使われる場合もあります。

     彼が責任者なので、すべて彼が責任を持って事にあたらねばならな
     かった。

主体が違う場合、従属節は「Nが」が基本ですが、「Nは」になる例がけっ
こうあります。状態性の述語の場合、それに対比の意味合いが強い場合などで
す。

     今日は3日ですから、返却日は10日ですね。 
     店長は風邪で休んでいたので、彼女が全部取り仕切った。
     こっちは終わったから、あとはあれを運ぶだけだ。


参考文献
森田良行・松木正恵1989『日本語表現文型』アルク出版      
グループ・ジャマシイ編著1998『日本語文型辞典』くろしお出版  

野田春美1995「「のだから」の特異性」『複文の研究(上)』
岩崎卓1993「ノデ節、カラ節のテンスについて──従属節事態後続型のルノデ/ルカラ──」待兼山論叢 日本学篇27号
岩崎卓1996「ノデの視点とノニの視点-トイウノデとトイウノニから-」『現代日本語研究』3大阪大学
岩崎卓「ノダカラ」の統語的特徴について小泉古稀記念『言語探求の領域』
賈朝勃「カラ・ノデ節中の述語の「同時型スル形」」不明・紀要
神永正史「ノデ節、カラ節の、ル形とタ形について」不明・紀要
三枝令子1993「語形から機能を知る-ので、のに、だけで、だけに、の分析を通して-」『言語文化』30一橋大学
塩入すみ1995「カラとカラニハ」宮島他編『類義下』くろしお出版
白川博之1996「理由を表さない「カラ」」『複文の研究(上)』くろしお出版
宗田安巳「日本語の原因・理由表現について-命題性からみた複文と単文の相互関係」小泉古稀記念『言語探求の領域』
趙順文1989「国語辞書に見る「もので」の記述」『吉沢典男教授追悼論文集』
張麟声1998「原因・理由を表す「して」の使用実態について-「ので」との比較を通して-」『日本語教育』96
豊田豊子「理由を表す「て」」NAFL通信講座
中畠孝幸1995「ダケニとダケアッテ」宮島他編『類義下』くろしお出版
姫野伴子1995「「から」と文の階層性-演述型の場合-」阪田記念
前田直子1997「原因・理由を表す「ばかりに」と「からこそ」」『東京大学留学生センター紀要第7号』
望月通子1990「条件づけをめぐって-「理由」の「シテ」と「カラ」-」『日本学報』9大阪大学
青山文啓1995「ある複文の中の助動詞」『阪田雪子先生古稀記念論文集 日本語と日本語教育』三省堂

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