明け方の記者会見、ぐったりした欧州連合(EU)の要人が語る。「マラソンはギリシャ言葉だと改めて学んだ」。13時間の激論の末に決まった14兆円のギリシャ支援。この国の浮沈と通貨統合の成否は、コインの裏表といえる▼ユーロ硬貨の片面は国ごとに違う。1ユーロ玉なら、ドイツは国章の鷲(わし)、ギリシャは古代の銀貨に刻まれたフクロウだ。EUは、鷲とフクロウの力を同等に保とうと七転八倒している▼綱渡りの金策はわが国とて変わらない。政府は個人向けに復興応援国債を出す。金利は渋いが、3年持てば残高1千万円ごとに1万円金貨、100万円につき千円銀貨がもらえる。金銀共通のデザインは「奇跡の一本松」である▼金貨の表側には東日本の地図とハト、銀貨には大漁船と稲穂をあしらう。記念硬貨のおまけは、国民の連帯意識に訴える「絆商法」にみえる。なにせ税収が増えるめどはなく、お金は国民から借りるしかない▼使えるものは何でもということか、政府は「休眠口座」にも関心を示す。銀行預金は出入りが5年ないと権利が消え、10年以上の休眠預金が年に数百億円も生じている。金融機関の懐に入るなら社会還元を、という理屈だ▼松はもうひと働きと喜び、預金は被災地で目覚める夢を見ていようが、大衆の財布ばかりをあてにしてはいけない。国が自らひねり出す努力にしても、泥にまみれた自衛隊員らの給料が削られるのに、国会議員のコスト減らしは後回し。どうも順番を間違えた話が多い。